オレグ・ミチャエフ、ロシア・ノーボスチ通信社、経済解説員。
2月5日のジュネーブで開かれた世界貿易機構(WTO)の総会で、ウクライナはWTO加盟の議定書に調印した。WTO加盟への道はウクライナはロシアと同じように遠い昔の1993年に始めた。そして、最近の急転回の行動で、北の強力な隣国を追い抜かした。ロシアはWTO加盟のために依然としての終わりのない交渉を続けているが、これでどうやらウクライナの加盟が最終的に成立する前には、自国のWTO加盟問題を終了することはできなさそうだ。従い、早晩、ウクライナは、完全資格を持つWTO加盟国として、加盟候補国の段階にあるロシアに自分の条件を突きつけてくることは否定できない。
大雑把に言えば、まだウクライナだってWTOへの加盟を最後まで果たした訳ではない。WTOの152番目の完全加盟国になるためには、ジュネーブで調印されたWTO加盟の議定書を、今度はウクライナは自国の国会で可決しなければなければならない。ウクライナの与党「オレンジ」連合は国会では過半数に達しておらず、そのために同国の国会は法案審議がいつも停滞することを考えると、WTO加盟の批准作業は長引く可能性がある。さらに、WTOには、加盟の議定書が批准されてから30日経過してからやっと完全加盟国になれるという規則がある。このようにして、ウクライナが完全な加盟国のステータスの獲得は、概算評価から判断しても、5月まで延長されることは十分あり得る。
しかし、ロシアはもっと苦難がある。ロシアはWTO加盟への非常に長い、そしてすでに歩んだ道がある。しかしそれでもWTOへの完全資格を獲得するために、今までの経験した障害よりはるかに大きいさらに克服しなければならない障害が控えている。周知の如く、世界の自由貿易の原理を守るこの組織に加盟するためには、加盟候補国は、WTOの全加盟国と、(それらの国が交渉を要求すれば)、交渉を行なうことを余儀なくされている。多年に亘る努力の結果ロシアはやっとアメリカとWTO加盟の2国間協定を結ぶことに成功した2006年末には、これでやっと最後の大きな障害は除去されたかのように思われた。しかし事態はそんなにとんとん拍子に行かなかった。
ロシアのWTO加盟交渉の過程には、常に新しい交渉相手が現れ、交渉の終了を邪魔した。しかも、これらの国は自分自身が加盟国になるとすぐにロシアとの交渉に入ってきた。旧ソ連諸国もこのように行動した。例えば、エストニアは1999年に、グルジアは2000年に、モルダヴィアは2001年に加盟し、すぐにロシアはこれらの国と交渉を行なわざるを得なかった。
ロシアのWTO加盟問題は最近ペルシャ湾岸の諸国にも発生した。2007年9月、WTOに関するロシアとの交渉を発案したのは、2005年の末に正式加盟したばかりのサウジアラビアだ。アラブ連合首長国(UAE)も昨年の年末近くにロシアと交渉したいと突然表明してきた。
このように、ウクライナとの交渉を避けるのに間に合うための、つまりウクライナがWTOに加盟する前にこの組織にロシアが加盟してしまう時間はロシアには殆ど残らなくなった。ロシアの交渉者に許される2-3ヶ月という期間の間にやらなければならないことは、まず第一に、サウジアラビアとアラブ連合首長国との間で行われているだらだらとした交渉を終了することだが、交渉ははかどらず深刻な問題となっている。ロシアの交渉団に同行しているノーボスチ通信社の情報筋はこれらの交渉はいつ終了するのか予想をつけ難いと語った。
第二に、全体的なレヴェルではすでに2国間合意を交わしているWTO加盟国あるいは地域とは具体的なレヴェルでの問題解決が要求されている。例えば、EUとは鉄道料率と原木(丸太)の輸出関税の問題、そしてグルジアとはアプハジアと南オセチア国境の通行地帯に関する問題、を解することが要求される。
第三に、農業分野でどの程度のレヴェルまで支援するか多面的交渉を行なう必要がある。これには、獣医学、植物衛生、そして知的主有権保護の問題が含まれる。
もしロシアが、ウクライナがWTO加盟を最終的に成立させる前にこれらの問題の糸球を解くのに間に合わなければ、ロシアのWTO加盟は大幅に遅れることになろう。そうなれば、ウクライナの「友人」は「我々はサウジアラビアとUAEがやったようにロシアと2国間交渉を始める用意がある」と「青い目」をして(恥かしさを感じもせずさらっとして)要求してくるだろうと上述のノーボスチ通信社の情報筋は語った。
先日、ウクライナ大統領ヴィクトル・ユシェンコは、(まさに彼がジュネーブで自国のWTO加盟の議定書に調印したのだが)、この機構の加盟国になればロシアに圧力を与える道具に利用できるだろうとあからさまに表明した。彼の発言によれば、ロシア自身もWTOに加盟したいことを考えると、両国の間では、ウクライナ製品へのロシアの独占禁止関税を含め、ロシア・ウクライナ貿易の問題となっている項目について「興味あるテーマでの交渉」が続出するだろう。
ロシアとウクライナの交渉者にとっては、実際に、協議すべきテーマはある。例えば、ウクライナ側の言い分では、ロシアがウクライナの輸出製品商品に対して設けた制限により、ウクライナは輸出が30億ドルも減少し、ウクライナの入超がロシアとの貿易で60億ドルまで増大するに至ったとしている。
尤も、ウクライナの首相、ユリヤ・チモシチェンコは、最近、キエフはWTOに加盟してもそれをモスクワへの圧力に使わないと言明した。しかし、経済学者たちは、ウクライナが、ロシアとの2国間関係を解明するためにWTO加盟から得られる利点を使わないことは信じ難いことだと考えている。