オレグ・ミチャエフ、ロシア・ノーボスチ通信社、経済解説員。
ロシア財務相アレクセイ・クドリンは、どうやら、何のために安定化基金に巨額の資金を貯蓄したのか忘れたようだ。彼は、常にその資金は「安全の枕」だと呼ぶ。しかし、この資金はロシアが輸出する原料の価格が下落した場合国庫を補うため一部支出する必要のある資金であることを話したくもないようだ。1月30-31日に開かれた「フォーラム・ロシア」では彼は組織改革される安定化基金の資金の一部は外国の株式に投資されることを明言した。彼の同僚は、成功による過度の目眩で倒れないように彼を如才なく支えるよう試みた。
投資会社「トロイカ・ダイアログ」がモスクワで開催した「フォーラム ロシア」と名付けた豪華なイヴェントの第一日目の真打ちは、ロシア財務相アレクセイ・クドリンであった。アレクセイ・レオニードヴィッチは、先週世界経済フォーラムが開かれたダヴォスからモスクワに彼を届けた飛行機から直接フォーラムに出くわしたようだ。そこでは、彼は、ロシアは、アメリカのサブプライム危機から荒れ狂った世界の金融の不穏な海の中で「安全の島」として残っていることを全員に確信させたことを喚起したい。石油輸出の超過所得のお陰でクドリンの努力の結果ロシアは「安全の枕」を貯蓄することができ、安定化基金には1570億ドル(16兆4900億円)の資金が貯まった。従い、ロシアに待っているのは、クドリンの考えでは、虹のような将来だけであるとのことである。
モスクワでは、クドリンは、安定化基金とその今後の管理戦略について、再び思い起こさせてから、華麗な演説を続けた。2月1日から、安定化基金は、予備基金と国民福祉基金に分割させられる。基金の大部分(約1300億ドル)は、予備基金に回り、それは基本的には基金の従来の機能、「予備に備えてのへそくり」の機能、を果たすことになる。(構想上は、年金基金の不足を補うために利用する予定になっている)国民福祉基金の資金は、より大きい利益を得るために、とりわけ、外国の株式に投資される。クドリンの説明によれば、企業の直接買収、例えばアメリカの企業を、(それは中国が積極的に行っているが)、の話をするのはまだあまりに早い。ロシアではこのために貯蓄された資金はまだ不十分で、非常にリスクが大きい。しかし、クドリンも述べているが、いつか将来的にはこの話は論議されるだろう。
正直言えば、クドリンは何も新しいことを発明したわけではない。ノルウェイの経験を勤勉に、何年も続けて、真似しているだけだ。周知のように、ノルウェイはすでに全世紀に同様の石油基金を設立し、その管理経験がある。クドリンはそれを単にコピーしただけだ。しかし、外国の株式市場で金融危機が勃発した現在、そこで国家の資金を運用することについて真剣に論議することは全く理に適っていない。貯蓄した富を簡単に失う危険が高い。
さらに、株式市場の危機は、主要経済国の経済の停滞を来たす恐れがある。この場合、ロシアの資源輸出価格が下落し、ひいては、国家収入も減少する可能性がある。この場合、安定化基金の資金をどこに投資するかを考えるのではなく、予算不足の解消のために基金から資金を汲み出す必要が出てくるだろう。
このことについて、クドリンに、過渡期のロシア経済改革の担い手であり、彼の前の上官だったアナトリー・チュバイスとエゴール・ガイダルは同じフォーラムで、出来る限り仄めかせた。安定化基金の資金を浪費することを許さなかったことでクドリンを強く称賛しているチュバイスは、「今はマクロ経済政策をさらにもっと規制しなければならない、つまり、安定化資金を虎の子のように大切しなければならない」と強調した。ガイダルもほぼ同じ様な意見を持ち、「我々は起こり得る資源の価格下落の時に国家予算をまさに援助する安定化基金を大事に世界が震撼した時に備えておくべきだ」としている。ロシアの全輸出の60-80%は資源商品で占められることは様々なデータが示している。
しかしながら、財務省は、世界の金融危機がロシアに影響を与えるとの考えは受け入れていない。クドリンは、近々の2-3年は、ロシア経済は6,5-7%のテンポで成長して行くだろうとの予測をしている。つまり、財務省では、資源価格は高いレヴェルのまま推移し、安定化基金は増える一方だろうと判断している。従って、国家予備金は「より「高い利益の見込める」対象(株式市場)を益々探すことになるだろう。