マクシム・クランス、政治解説員、ロシア・ノーヴォスチ通信社に寄稿。
数百万人の外国人旅行者が毎年モスクワにやって来る。多くの人は初めてではなく、モスクワを本当の聖地巡礼の地にしている外国人もいる。彼らは訪問を終了しても心だけはここに残して帰る。
何が外国人たちにロシアの首都を惹き付けるのだろうか?ロシア正教寺院の金色の円形の葱坊主、世界芸術の傑作が集められている絵画画廊、あるいは、正等に評価しても世界で最も美しいとされるロシアの娘たち?だろうか。恐らく、これらすべてと、その他多くの魅力が合わさって惹き付けられるのだろう。そして、とにもかくにもモスクワは現在世界旅行の求心力の中心になった。
昨年、外国からロシアに約2300万人の人がやって来た。そして、ロシアツーリズム(ロシア旅行局)の統計では、今年の上半期だけの集計でこの数は1100万人以上になる。しかもこれらの旅行者は大部分モスクワに集中する。
モスクワ政府旅行委員会の情報によると、近年、モスクワを訪れる旅行者の数は約15%増大した。今年は、この増大は少し減った。それは世界金融危機の影響が旅行産業にも影響を及ぼしていることを否めない。しかしそれでもモスクワの役人たちは若干の増大はあると確信している。なぜなら、複数の専門家によれば、需要の減少は価格の減少につながるからである。外国人はモスクワに、本年末までには450万人、2009年には全部で500万人が訪れるだろうと予想されている。因みに、1990年代初めの旅行者はわずか90万人だった。
最近、アメリカの新聞、The Wall Street Journal紙はモスクワの旅行市場についての記事で、モスクワには5年後に800万人、10年後には1600万人の外国人が訪れると指摘している。これはパリよりも多い。しかし、モスクワはこのような旅行者の大群を受け入れる能力があるのだろうか?
モスクワ政府はこの問題の深刻さを十分に判っている。なぜなら、ホテル事業は、極端になおざりの状態でソ連時代からひどい目にあっていたからだ。外国の客を対象にしていた「インツーリスト」系のホテルを除いて圧倒的多数のホテルは、世界規準に適合しておらず、快適さやサービスレヴェルという点では、如何なる批判も甘受せざるを得なかった。
新しいホテルを建設するという重大で理に適った関心が起こったのは、ロシア経済が1998年のデフォルトから立ち直り、企業に建設に投資するだけの「余裕」資金が出てきた最近のことである。そしてどうだろう、現在はこの分野では本当のブームが起こっていると言っても良いだろう。ABARUS、Market Researchのデータによれば、ホテル市場の資金容量は現在17-20億ドルと言われており、20-25%のテンポで増大している。
当然、増大率で一番「昇格した」のは最も裕福なロシアの都市、とりわけモスクワだ。ホテルビジネスの発展のテンポが最高のレヴェルにあるのがモスクワであること簡単に説明できる。ビジネスマンも一般旅行者も主にここにやって来るからだ。それは文化的歴史的魅力からだけでなない。現在ここは、世界の政治やビジネスの中心になっているからだ。その経済は、最近、確実な伸びを示している。そのため、モスクワは、ロシア企業のみならず外国企業からも益々多くの投資を誘致することに成功している。最近の2年間だけでも、誘致された投資金額は20億ドル以上に達する。
その結果、2000年から始まり、モスクワではホテルの数は急進的に増大している。この7年の間に50のホテルが建設され、現在ホテルの総数は217に達する。
最近、ホテル運営のために、モスクワのディヴェロッパー(販売者)が有名な外国のホテル網を招聘する機会が益々増えている。そしてそれは当然の如く、非常に高いレヴェルのサービスの提供、そして、権威あるブランドの確保、ホテルの魅力を保証することにもつながる。現在モスクワのホテル市場には、Marriott、Hyatt、Swissotel、Holiday Inn、SAS Radisson、Kempinskyと言った多国籍の巨人ホテルが活動している。通常、彼らは、自分の資金を建設に投資せず、すでに建設されたホテルを運用する。彼らの4つ星あるいは5つ星のホテルは、ヨーロッパ諸国のホテルでは理想的な満室度は50%と言われている中、90%以上の満室率を誇っている。
世界旅行機構の行なった調査によると、個人旅行ではなく、グループの一員としてやって来る西側の旅行者の1日当たりの消費額は80ドルから100ドルだ。しかし、この額で滞在出来る「エコノミー」、つまり安いが同時に十分に快適なホテルはまだモスクワでは明らかに不足している。中流の部分の発展にブレーキを掛けているのは、とりわけ、高い土地価格だ。
現在、モスクワのホテル用地は6万4000箇所である。従い、年々増える旅行者の数に対応するために、3年以内にホテル用地を17-20万箇所に、2020年までには50万箇所に増やす予定だ。2008年だけでモスクワには、28の新しいホテルが建設されることになっている。そして2011年までには、モスクワ政府は353のホテルの建設を計画している。しかも、新ホテルの大部分は、2つ星あるいは3つ星のエコノミークラスだ。「ロス・ビジネス・コンサルティング」社の調査では、現在、モスクワでのエコノミークラスのホテルへの需要は供給の30倍を上回っている。
モスクワ政府が外国旅行者を増加させることに真剣になっているのは理解できる。なぜなら、この事業は利益を生むことを誰もが知っているからだ。外国旅行者の消費によって生計を立てられる国すらある。「旅行産業」は世界のGDPの10分の1、貿易額の3分の1を占める。しかし、公式データによれば、モスクワの旅行産業が国庫にもたらしているのは7%だ。しかし近い将来は、旅行産業のリーダーたちによれば、この割合は上昇の一途を辿ると確信している。