オレグ・ミチャエフ、ロシア・ノーボスチ通信社、経済解説員。
絶え間なく高騰する資源価格とロシア企業の作業の相対的低コストのお陰でロシアの冶金産業は、アメリカの競争相手に対する圧倒的な利点を有し、次々にアメリカ企業を買収している。Evrazグループとパイプ冶金会社(ロシア語略TMK社)は3月14日、北アメリカのIpsco社を40億ドルで買収する旨表明した。ロシアの企業は、自社の工場で、主要な世界の石油会社のためのパイプラインを建設するつもりだ。
これはアメリカでの(外国の会社も含めて)巨大ロシア鉄鋼グループEvrazが行なうすでに3度目の買収になる。2006年末にはEvrazは、やはりパイプラインを製造しているアメリカで最大の鉄道会社Oregon Steelを買収した。昨年Evraz社は5億6500万ドルで、デラウエア州にある橋と車両建設の鉄鋼メーカー、Claymont Steel社を買収した。
フットボールチーム「チェルシー」の億万長者オ-ナー、ロマン・アブラモヴィッチがその主要株主リストに名を連ねているEvraz社は、1年前にIpsco社に価格を打診していた。しかしその時はEvrazグループはIpsco社の提案する価格や売却物の資産内容に満足しなかった。
しかし今回行われた大規模取引にはEvrazは満足だった。Evrazは、現在はスェーデンの所有者からパイプラインメーカー10工場だけを買った。そしてそのうち3つの工場だけをカナダに自社用に残し、残りのアメリカにある工場は17億ドルでTMK社に転売した。このように、Evraz社は入手したい工場は自社に残し、残りは高い価格でTMKに転売することができ、非常に節約した取引ができた。現在まで、海外に大きな資産を持っていないTMKについてもこの強力なパートナーとの同盟のお陰で、世界市場への突破口を切り開くことができたわけだ。
カナダの自社工場ではEvraz社は溶接大径管の、TMK社はアメリカの自社工場でシームレス小径管の製造に集中する。このようにしてロシアの企業は北アメリカで、高質の会社を買収してことを指摘したい。そもそもIpsco工場ではパイプは特殊合金で作られそれは高精錬冶金商品との評価が高かった。
さらにこれらの製品は非常に将来性がある。このようなパイプは、小径管も大径管も、石油ガスセクターで、炭化水素の輸送としても、また、探索や掘削にも使うことができるからだ。現在Evraz社とTMK社は、これら製品を世界の巨大石油ガス企業、ExxonMobil、Royal Dutch Shell、そしてBPなどに納入している。
あらゆる角度から見て、Evraz社とTMK社では、数十年殆ど何も投資されなかったアメリカのインフラセクターが大きく成長することに期待している。エネルギー価格の記録的な高騰しているまさに今、この期待はとりわけ大きい。
「ノリリスク・ニッケル」や「ルースキー・アルミニウム」(UC) RUSAL)と共に、Evraz社は、ロシア企業の中で、海外を対象に最もアグレッシヴに資産を買収している3本の指に入る会社だ。同社の金属部門の資産は、CISにもあり、アフリカにもあり、そしてアメリカにもある。今年の初め、Evraz社はロシアの鉄鋼会社で初めて、外国の企業では極めて参入が難しいと言われる中国市場にも突破口を切り開いた。中国の競争相手Delong Holdingを吸収する協定を結んだのだ。そのことで中国市場に参入が可能となる。
尤も、Evraz社と言えども可能性は無限ではない。独自の試算によればEvraz社の負債は現在65億ドルに達する。上述の取引のための資金調達はEvrazは新しく借入れすることでまかなう計画だ。北米工場買収の仲間になったTMKを誘致するのもどうやら資金の問題も同社の決定に微妙に影響を与えたようだ。