高精度武器捕獲網
08:4519/05/2008

アンドレイ・キスリャコフ、ロシア・ノーボスチ通信社政治解説員。

 

5月9日の戦勝記念日の赤の広場でのパレードの時に披露された戦略ミサイルの行進、それは強い印象を与える光景だった。しかし、誰もこの兵器を使って戦争しようとは思っていない。そうこうしているうちにも、世界の軍事紛争の「密度」は増大し続け、現在は主要な役目は、通常兵器が、と言っても高性能に設計された兵器だが、主役を果たしている。

 

実を言うと、アメリカ人により現在設置されているMD体制もその地上及び海上及び防空設備に密接に結びついている宇宙体制も、ミサイル核戦略兵器のみならず、ありとあらゆる高精度武器兵器から身を守る手段以外の何ものでもない。アメリカ人は用意周到で、航空宇宙攻撃から守るすべての手段を1つの束にまとめることを事前に察知し、このような計画にすでに大分以前から取組んでいるが、我がロシアの指導部は、発表されたところによると、4月末になってやっと、高射ミサイル兵器統一システムの製造に関する計画を作成し着手したとのことだ。

 

当時のロシア政府の第一副首相セルゲイ・イワノフの指摘によると、「種々の方策には高性能兵器からロシア国内の軍事力や経済、インフラを守るために、機種を超えた管理及び情報手段の統一された防衛体制の構築が計画されている」とのことである。しかしイワノフは、現在、陸海軍に編成されているのは1960-1970年代に開発されたミサイル高射兵器のままであることも、同時に、強調している。

 

つまり、イワノフは、編成部隊を、航空宇宙攻撃でも撃退できる近代的なミサイル高射兵器に早急に編成換えする必要があることを呼び掛けたのである。とりわけ、昨年7月にテストが行われ高度な性能を発揮したS-400型「トライアンフ(凱旋勝利)」は再編成に相応しいだろう。

 

実際、設備は本当に優れている。前の機種S-300と違い、S-400は地球空間のみならず、近い距離の宇宙空間でも目標物に打撃を与える可能性をもっている。このようにして、将来は、「トライアンフ」はロシアの航空宇宙防衛統一システムだけでなく、導入(輸入)してヨーロッパにとっても非戦略的MDシステムの基盤になることも可能だ。

 

1つ困ったことがある。それは新しい兵器の配置のテンポが必要な水準からほど遠い位置にあることだ。今の所は、S-400が配置されている唯一の個師団はモスクワ郊外のエレクロスターリ市地区だけである。

 

ところで、高射ミサイル兵器統一システムの製造とそのシリーズ生産の準備について言うと、セルゲイ・イワノフは、「まさにこの製造そのものを妨げている一連の問題が存在する。それは、まず、財政問題、そして、企業の選択、シリーズ生産のための生産手段の不足、組入れられる部品の品質、などの問題である」と指摘した。

 

どうやら、ここに挙げられた原因は防衛製造を妨げているだけでなく、全国民的な経済の問題でもある。さらに、防衛産業には、高品質の祖国の開発商品は最初、外国市場に回し、祖国の軍事兵器の需要には残りの商品を使うという破滅的伝統が最近形成されている。この意味において輸出がすでに運命付けられているS-400のその例外ではない。

 

言い換えれば、ロシアの領内すべてに重要兵器を十分に効果的に配置するにはまだ多くの時間を要する。しかし配置されたと言ってもそれまでには、「トライアンフ」は疲弊し自分の達成できなくなってしまうだろう。なぜなら敵の攻撃手段も常に改良されているからだからだ。

 

しかし、高精度兵器への対抗はミサイル兵器の力を借りるだけが唯一の手段ではない。

 

高精度兵器は、その構成の中に照準計器あるいは自動照準が備わっている攻撃手段だ。このようにして、施設を守ることは、爆弾あるいは弾道弾あるいは巡航ミサイルを殲滅するか高精度兵器の照準方向を困難にさせることによって可能である。最近の例として保護隠蔽物を装着させることが非常に効果的な方法であることが論じられている。

 

近代的な外国の高精度兵器は、目標物を発見するために可視赤外線電波探知光線スペクトル機能が搭載された自動で照準を合わすことができる弾頭を搭載し、その機能を利用して作動するようになっている。もし、照準機能の、例えば、巡航ミサイルの、照準を事前に「目をくらます」ことができれば、そのミサイルの攻撃能力は実質的に失われることになる。

 

防空ミサイル設備を使わないで多くの設備の防衛を保証できるロシア軍が開発した非常に安い方法がすでに存在する。それは、上述の光線スペクトルに設備の見え具合を悪くさせる隠蔽物を空中に発射するための遠隔爆発用特殊弾薬である。これは高精度兵器の方向性や目標発見能力を失わせる効力を持つ。

 

高精度武器に対抗するこの方法だけに頼ってはいけないのは当然だ。しかし、新しい武器が雪崩れのように早いテンポで開発されている世界の現状では、防衛のためには手元にあるものは何でも利用したほうが良い。