タチヤナ・シニーツィナ、ロシア・ノーボスチ通信社、解説員。
ロシアの会社「アトムストロイエクスポート」社は、3月25日、質素に10周年記念を祝した。しかし、同社が国家のため、原子力産業界のために、どれほど多くのことを成し遂げたかは指摘しないわけにはいかない。同社は、外国市場でエンジニアリング部門とプロジェクト管理の部門で最優秀の実績を上げた企業としてノミネートされ、「国民賞」という形で称えられた。
思えば、ブルガリアの「ベレーネ原発」プロジェクトを勝ち取った「被祝賀人」、アトムストロイエクスポートがブルガリアや競合他社と繰り広げた熱い闘いの時期のエピソードが思い出される。2006年の春、ロシアのジャーナリストグループは、ドナウ川沿いの都市、ベレーネで、新しい原子力発電所を建設する権利を勝ち取るための競争者との激しい争いで「アトムストロイエクスポート」の専門家を情報で支援するために、ソフィアに飛立った。共通の熱い波がその時我々を近づけた。我々は、プロジェクトの運命を案じ、状況を熱く論議した。そしてロシアのチャンスは確固たるものであることを信じていた。従い、このはっきりわかる事実をブルガリア人がどういうわけか疑っていることに驚いた。
ソフィアでは世界で最優秀の原子力プロジェクトが手頃な価格で提案されたことに殆ど疑いを持たれなかった。しかしあまり良くない政治的要素も混ざっていた。ブルガリアはEUに加盟する瀬戸際に立っていた。従い、ブルガリアが企てた大原子力プロジェクトにロシアが参加することは、デリケートな問題だった。ブルガリアは出来ればロシアに参加してもらいたくなかった。従い、ほんの1つでも良いからロシアの間違いを見つけようと思った。しかし間違いが見つからずブルガリア側のプロジェクトの専門家はロシアになにも言い掛かりがつけられなかった。ロシアは、言ってみれば、必死であり、数トンに及ぶ書類を作成し、あらゆる質問に答え、どんな小さな疑問にも説明した。ブルガリ人は、単に、ロシアの設計プロジェクトを勝利者と認定する以外に道はなかった。このようにしてロシアの原子力界がヨーロッパに戻って行った。
職業的根気、精神力が「アトムストロイエクスポート」をEU圏でのロシアによる最初の建設権を獲得するための競争闘争での勝利に導いた。この行動スタイルは定番になり、(やはり決して楽ではない条件だったが)チャンヴァン(田湾)原発が建設された黄海の中国側湾岸でも、そして、インドのクダンクラム建設現場でも発揮された。
ロシアの原子力界が「こんな建設はもう沢山だ!」と言っているイランの不快極まるブシェル原発建設については何と言おうか!? その建設作業ではどれほどの忍耐と力が要求されただろう!ロシアは、当時悩まされていた苦しい経済状況のためだけで、Siemensによって開始され途中頓挫し、約20年間も太陽の下に野ざらしにされ、蛇が蔓延り砂に埋もれていたブシェル原発建設の引継ぎを引き受け、そして完成させた。
しかし、建設それ自体の復活は一番難しいことではなかった。もっと難しかったことは機械装置の状態だった。Siemensは、かつて、約3万5000台の機械を運び込んだ。そしてその多くが錆びが出来、老朽化し、使用可能なものはわずか7分の1だけであることが判った。寸法や構成がロシアのプロジェクトと合わず、新しい装置が必要になった。技術的困難以外に、イランを巡って発生した政治問題も時間を引き延ばしにした。それでも建設は動き、今はもうfinish(最終段階)が見えるところまで来た。
「アトムストロイエクスポート」が記念した10周年記念は、もちろん、もっと深い歴史的中身を持っている。会社の基礎となったのは、外国で長年の原発建設経験を持っていた会社、「アトムエネルゴエクスポート」と「ザルベジアトムエネルゴストロイ」であった。「アトムストロイエクスポート」は、2つのこの組織の根幹的権限のみならず外国市場での巨大な経験を一手に集中させることに成功した。
新会社設立の決定は、ロシア経済にとって苦しい、市場経済への移行期に下され、ロシアの「原子力」事業を国際市場に推進させる必要性からも決定された。世界の様々な国で自分のプロジェクトを推進しつつ、「アトムストロイエクスポート」は、10年間、管理体制を磨き上げ原発建設管理をする上での新しいアプローチを開発した。
現在、「アトムストロイエクスポート」は、世界市場の20%以上の量に達する注文を遂行している。同社は、強力なWWPR-1000型原子炉(加圧水型原子炉)が設置される原発を4つで同時に建設している。インドでは「クダンクラム」原発に2基、イランでは「ブシェル」原発の建設の最終段階を向かえている。ブルガリアの2基型の「ベレーネ」原発は建設過程にある。中国では、チャンヴァン(田湾)原発で2基のエネルギーブロックが引渡され、現在、稼働保証期間中であるが順調に運転されている。このように、ロシアの原子力界と関係を持つパートナーは多様に広がり、彼らのすべては、必ず、ロシアとの協力を今後も計画し、ロシアの原発は世界を席巻することになるだろう。