タチヤナ・シニーツィナ、ロシア・ノーヴォスチ通信社、解説員。
有名な湖バイカル湖、地球で最も広い淡水貯蓄地、が、とうとう、紙パルプ工場の「毒」と工場によって生まれた17000人の都市バイカルスク市の下水処理水で汚染することを止めた。この2つのお互い結び付き合って湖を汚染していた汚染物は8月15日から、バイカルの水の最大限に大切にした環境に優しい利用を検討しているプロジェクトの実現に取組んでいる。
紙パルプ工場には水利用の閉鎖型水利用サイクル(Closed-loop Consumption Cycle)という原理的に新しいシステムが導入される。この閉鎖型サイクルは、冷却、商品洗浄などその他同様の目的で利用される水は洗浄に付され、一連の貯水池に保存され、生産工程に戻ってくるサイクルである。工場は、新しいシステムに移行するのに必要なすべての作業を完了するために5日間操業を停止する。主要装置は修理され、タンクが洗浄され、下水処理システムが検査される。
市と工場の汚水設備は、共通の水収集用のマニフォールドがあり、それは、パルプ製紙工場の水利用システムの刷新に邪魔になっていた。現在は、マニフォールドは分岐され、どちらの利用者も自分のセクターには責任を持つことになる。セクターの1つは、その責任が市から認定を受けたバイカルスク汚水処理工場に譲渡される。もう1つのセクターは、工場の生産設備に直結され、洗浄された汚水を生産工程に戻すシステムにつながっている。
脇から見れば、工場の革新は、国内で積極的な技術及び設備刷新が行われている現状を考えれば、月並みで日常的作業だ。それでもこの革新は、長きに待った基本的な出来事である。それはあからさまの経済的利益追求との戦争における環境の健全思想の大きな勝利とも見なすことができるからだ。
社会、マスコミ、自然保護団体がバイカル湖岸での有害な生産の存在を撲滅させる闘争を始めてから以来、40年以上の歴史になる。しかし、国家が健全な思考の側に立つまで何も事態は変わらなかった。湖岸からの工場撤去もうまくいかなかった。しかし、水利用の閉鎖型新システムに消費するよう紙パルプ工場を強制させることには成功した。
湖にとっての主要な毒は塩素とフェノールだった。国際基金「世界遺産バイカル」の会長で生物学者のラリサ・コホヴァは、湖に汚水を持って入り込んで来る塩素廃棄物や木材浮遊物のほんのわずかな量でも、脆弱なバイカルの食品の回路を破壊するのに十分なのだと主張する。湖の水を濾過しているバイカル特有の動植物物である小エビ、カイアシ類プランクトン群(Epischura)は退化の兆候が見られ、鰓が傷んでおり甲冑が小さくなっている。
湖のドラマが何から始まったから思い出すのは価値がある。当時最高指導者ニキータ・フルシェフが最高指導者だった20世紀60年代の直前にバイカル湖の南端に紙パルプ工場を建設する決定が下された。当時、ソ連は西側との熾烈な競争をしており、最も可能性のない構想でも賭けに出た。国家は、超音波航空と発展する宇宙計画のために超硬度繊維性コード(タイヤ用の綿の撚糸)を必要としていた。このような状況において、この超硬質繊維を製造するために極めて必要な超純水の源泉としてバイカルには極めて実利的な視線が向けられていた。商業的利用が環境よりも重要だった。
しかし、紙パルプ工場は愛国的目的に奉仕することはなかった。なぜなら、この問題の解決のために別の方法が発見され、バイカルの工場はそのまま残り、通常の紙パルプ製造用にモデルチェンジすることになった。
ここではバイカル湖を守ろうとする社会的な波が沸き起こった。しかし工場建設に反対を唱えない者もいた。科学アカデミーを代表して肯定的結論を出したのはアカデミー正会員N.ジャヴォロンコフだった。彼は、バイカルに入る排水は、あなたが普通に飲む水よりきれいですよといってフルシチョフを説得した。
そもそも、ジャヴォロンコフは良心を曲げなかった。バイカル湖の工場に排出される水(年間4200万m3)は全くきれいに湖に戻って来る。いずれにせよ、工場に滞在した世界銀行のスエーデン、ノルウエイ、フィンランドからの7人の紙パルプ産業の専門家は、「バイカル湖の紙パルプ工場の排水の純水基準は非常に高い。ただ、世界で非常に貴重な湖にこのような企業を設立することはどこであろうと受け入れられることはないだろう」との意見でまとまった。
「閉鎖型サイクル水利用の設立は、バイカル湖の汚水はもう排出さらず、そしてその時、導入される新技術はバイカルの環境の健全への道の大きなステップになることを意味する」。未開自然基金計画会長のヴィクトル・エリスはバイカル湖の紙パルプ工場に閉鎖型水利用システムへの移行をこのように評価している。しかし、「すべてがそんなに健全であるとは考えてはいけない。問題は残っている。紙パルプ工場は、貴重な自然対象物の近くにある大規模な産業工場だ。環境を毒する蒸発も発生する。パイプからは化学物質が放出される。バイカルスク地域の状況は哀れむべきだ。木々の梢は課乾いて枯れ、大気も健康的とはいえない」とも指摘している。
専門家は、バイカルは、深海潜水艦「ミール」号の探検の過程で、湖底で発見されたエネルギー資源、石油やガス・ハイドレート(gas hydrates)、を求める経済利益追求の対象地域になってしまうことも懸念している。さらに、ガスプロムに提案されている自然利用バイカル研究プロジェクトも相当の慎重論を呼んでいる。プロジェクトでは、黒海の「ブルー・ストリーム」或はバルト海横断の「ノルドストリーム」の例と同じ様に、バイカル海域を経由の直接パイプラインの敷設により、外バイカルバイカル湖東岸地域をガス燃料を引くことが検討されている。
幾人かの人は、バイカルは、強大で、2500-3000万年のあらゆる大変動を乗り越えて来た頑強さがあり、堅固な力強さと人間が作ったネガティヴな要素を跳ね除ける力を内包している。しかし、文明の侵略的な人工的食欲の下では自然の創造をも壊されてしまうこともあり得る。そしてそのような例は他の場所には非常に多い。