ロシアに予期せぬ新首相が誕生
09:3718/09/2007

アンドレイ・ヴァヴラ、ロシア・ノーボスチ通信社政治解説員。

 

 

2008年の大統領選の半年前に当たる今、ウラジミル・プーチンは内閣の交替を行なった。交替はいつものようにアナリストのすべての予測と予言を覆すものとなった。アナリストは、「プーチンはすでに後継者を決めている。後継者には現在の第一副首相のセルゲイ・イワノフを就任させるはずである。若干のチャンスとしてもう一人の副首相であるドミトリー・メドヴェジェフにも残っている。後継者の二番目の隊列には大統領の側近の中の誰もが知っている人物にも可能性がある」と予測していた。

つまり、エリツィン前大統領により最初やはり首相に指名されたプーチン自身の場合と全く同じスキームの政権移譲が起きることが予想された。アナリストたちは、「イワノフがプーチンから首相に任命され、そしてその後、首相の職から大統領選挙に立候補するはずである。そのためエリツィン時代のロシア政府の新しい首相の名前、それはまさに立候補者プーチンの名前であったが、ロシアの新大統領の名前になった。今回もこのスキームになる」と考えていた。

しかし筆者が覚えている限りでは、ロシアの政治で政権移譲の予測ができたことなどなく、大統領による任命を誰かが一回でも言い当てたことなどなかったはずだ。今回もそのようなことが起こった。プーチンが任命した新しい首相は、誰の予想リストにも如何なる選挙候補リストにも全く載っていなかった。その名前は、最近、金融部門の違反と犯罪を根絶させる闘争を驚くほど効果的に率いた金融モニタリング局々長、ヴィクトル・ズプコフである。彼はかつて、サンクト・ペテルブルグ市庁での作業でプーチンの部下であり、そして、現在まで、プーチンの最も信頼できる側近の一人であり続けている。

前首相のフラドコフは、最大に敬愛され職を去った。彼には、ロシアでは大統領または科学や芸術の天才にしか授与されない「祖国への功績」第1等勲章が授与された。

 

このようなわけでヴィクトル・ズプコフがロシアの次の大統領というわけである?

しかし、今日までは彼は殆どテレビ画面に現れず、そして、レーティングや世論調査には全く言及されたことなどなかった。つまり、有権者にとって彼は全く無名の人物なのである。この人物がプーチンチームの中の一人であることくらいは知っている。そして、現在の大統領まで存在している信頼の程度の下では、ズプコフを支持する大統領の言葉は、価値があるだろう。2008年の3月に投票場に来る人の大部分はプーチンの選択を支持する意向である。しかもズプコフには国の秩序を戻したという圧倒的な切り札を持っている。彼なら汚職根絶の闘争を大規模に展開できるだろうし、そのことは確実に国民の熱い支持を呼び寄せるだろう。しかし時間があまりに少ない。大統領選挙キャンペーンが始まるまでわずか3ヶ月しか残っていない。

しかし、もしプーチンがズプコフには大統領になることを全く期待していないなら?もし彼がそのまま首相の座のままに残り、本当の大統領後継者がさらに名指しされたらどうなるだろう?その時は、単に、大統領が現在無条件に信頼できる人々を集めもっと結束の固いチームを作るにはどうするかに関する論議になるだろう。

9月14日の金曜日、憲法にもとづき、下院で新首相の任命が承認された。その後は何が起こるのか?テレビ画面では現在、以前予想されていた候補者の顔が去って行き、彼らの席には、急ぎ自分をテレビ視聴者に慣れてもらうよう努める新首相となる人物がつくことになるのか?実際、テレビは政権TOPで起こっている変化を示す非常に重要な指標になる。しかしもしすべてが、以前通りで単に新しい顔が加わるだけならば、これは何を意味するのか?

政府の長にヴィクトル・ズプコフという「得体の知れないダーク・ホース」を据えて、プーチンは来たるべくロシアの大統領選挙の状況を説明しなかったどころか、逆に、予想するのを難しくしてしまった。

ここで見落としてはいけない1つの状況がある。新しい首相は9月15日で66歳になったことだ。そして、もしまさに彼が2008年に大統領に選出されたら、2012年の選挙の年には、彼はロシアの憲法で大統領選には立候補できない年齢である70歳に達する。もしかしたらプーチンがズプコフを突然任命した意味の謎がここで解けるかも知れない。プーチンは、自分が経験したような一人の人物が長期に大統領に座ることのマイナス面を理解しており、民主国家のような大統領が交互に替わるような状況を作りたかったのか、あるいは、現在のロシアが強いリーダーを必要としていることも理解しているので4年後に自分が再登場できる人物を選択したのではとの推測も成り立つ。