アナトリー・ゴレフ、金融アナリスト、ロシア・ノーボスチ通信社に寄稿。
ロシア経済と株式市場には、2008年は明るい未来が予見される。アルファ・バンクのアナリストたちは、「ロシア市場に何らかの投資をしている投資家は、株式の特別の選択をしなくとも約30%の利益は取れる」と予測する。しかし、専門家は、すぐに、この収益性は当然のことで特別高いものではないと念を押す。特に、ロシア株式市場の毎年の指標の伸びが70%を超えていたことを考えれば尚更だ。そもそも30%もあれば収益性では外国投資家にとって魅力的以上ではなかろうか。ロシアは、本当に、彼らにとって「静かな湾」になる可能性が高い。
「静かな湾」、それは、国際投資が最近10年間で積極的に使っている用語だ。この用語は最近では、定期的にやって来る世界の金融危機に「耐える」ことができる市場という意味で使われている。「静かな湾」は安定しているだけではなく容量的にも十分に収容能力のある市場でなければならない。つまり、「静かな湾」になるための要求の1つには高い流動化がある。このような市場を探す必要性は、いつの場合であろうと、まさに世界に金融危機が訪れるのではとの話が出る時に必ず起きる。金融危機は、東南アジア諸国で始まりロシア経済を崩壊させその後一連のデフォルトと国民通過切り下げを誘発したラテンアメリカに飛び火した1997-1998年のアジア危機の時に起きた。次の危機は、アメリカでハイテク株バブルがはじけ、経済が後退局面に陥り、そのことにより自動的にアメリカの主要貿易パートナーであるEU諸国での経済成長テンポが停滞した2000年の始めに起きた。そして今、新たな危機局面は、アメリカでのサブプライムローンの危機で起こっている。この危機は、資本市場の凍結と誘発し、銀行の金融メカニズムそのもの有効性について問題を提起した。
上述の3つの危機の違いは、最後の場合のみロシアが「静かな湾」の役割をする候補者となることが真剣に論議されていることである。それは、1997年のアジアの危機の時にロシアが候補になれなかったことは驚くことではない。国内及び対外負債のデフォルト、さらに、株式市場の前例のない下落、それに引き続く経済不振を招いたことを考えればある意味で当然なことだ。その当時のロシアは経済が弱く、嵐を通り抜けさせる場所としてではなく、平穏を乱す投資家とみなされていた。2000年代の始めのころ、ロシアへの見方は若干改善されたが、アメリカでの「ハイテク」危機の時国際投資家の誰も、ロシア市場を相応しい代替市場とは見なさなかった。ロシア市場は、その時は、まったく予測のできない脆弱なものとみなされた。しかし、株式市場の伸びが2001年から2006年までの期間に57%に達したという事実は、投資家にロシア市場とロシア経済全体を見直すことを余儀なくさせた。
現在はというと、アナリストは、実質的にすべての面で、アメリカでのサブプライムローンと無関係であること、高い石油価格(上昇すら続けている)、ロシアの今後の経済成長を約束するプラスの予測、そして金通貨貯蓄の増大、などで、ロシアの利益になっているという独特な状況が形成されているとの意見を持っている。さらに、新しい段階にロシア経済を引き上げる「消費ブーム」も挙げられる。そして、重要なことは、国際人の自分のリスクに保険を掛け、アメリカやヨーロッパの会社の資本を引き上げ、それらを高収益で同時に十分に安定性のある市場に移管する志向がある。後者の中に現在ロシアの株式市場、特に、資源企業の株式、銀行の有価証券などの市場がある。
一見、これは不思議に見えるが、アルファ・バンクの「ストラテジー」のプラス面の要素の中にはロシアの政治が安定していることを挙げている。多くの専門家も意見を共有しているアルファ・バンクのステラテジストも、今年の大統領選挙はロシアの政治に深刻な振動を作り出すことはなく、国家主席が交替したあとでもロシア経済が急激に変化することは殆どあり得ないとの見方をしている。ドミトリー・メドヴェジェフがロシアの大統領に選出されることは非常に可能性が高いシナリオであり、ウリジミル・プーチンはこの場合、首相の職に就く。このことは、ロシアには恐らくさらに4年間は政治的安定があることを意味する。このシナリオが実現すれば、我々は、国家プロジェクトの遂行に関連して設定された課題、インフラの整備、住宅問題、保健、農業、さらに、近代的加工産業発展の刺激、などの課題が早期に実現されることを期待できるとアルファ・バンクのアナリストは予測している。
「静かな湾」の役割をすることを狙っている国ですら、経済問題がまったくないということはあり得ない。ロシアにとって、アルファ・バンクのアナリストの意見では、深刻な試練になるのは高いインフレ率である。2007年には、推定したレヴェルまでにインフレを抑えることができなかった。2008年には政府は物価上昇テンポに歯止めを掛ける課題をいままでよりも真剣に取組むことに成功するかどうか判らない。原料価格が、あらゆる予測では、高い水準のままであり、オイルマネーがロシア国内に流入し、その結果、減衰が起こらないことを考えれば尚更だ。しかし将来の投資家はこの事実を気にしていないようだ。
ロシアにとってこの順調なシナリオに、唯一陰を差す状況を敢えて述べれば、それはシア以外に「静かな湾」の役割を担おうとする国が複数出てくることだろう。まず、嵐のように経済が発展している中国とインド、さらに、現在記録的な石油価格のお陰で繁栄を謳歌しているアラブ諸国だ。国際投資家のアラブ諸国への関心が高まっていることは疑いのない事実である。しかしこのような背景のなかでもロシアはより魅力的に見える。なぜならロシアの経済は彼らの経済よりも多角的であり、銀行システムは彼らの国よりも発展した状態にあるからだとアルファ・バンクのアナリストは強調する。