UESが民間の手に
08:1030/05/2008

(UESロシア統一エネルギーシステム会社、英語略はUES)

 

オレグ・ミチャエフ、ロシア・ノーボスチ通信社、経済解説員。

5月28日に、歴史上最後のロシアの独占電力会社で上場企業「統一エネルギーシステム」社(Unified Energy System略して«UES»、ロシア語略では«ЕЭС»、統一電力体系、統一電力機構、統一エネルギー機構)の年次株主総会が開かれた。6月1日からは、国家の経営下にあった電力エネルギー部門の独占会社は、その存在を終了する。国家管理の下には、電力送電線、指令系統作業そして原子力発電所だけが残る。火力発電所については、完全に競争原理で営業する民間セクターに移行する。ロシアは実質的に電力エネルギーの多年亘る民営化(リベラル改革)を終了した。この点においてはロシアは、民営化を立案しているだけの段階にあるEUを追い抜いた。

 

UESの最後の株主総会は、UESの改革終了とその清算に関する最重要決定はすでに以前に採択されていたのでかなり形式的かる日常的に終了した。それでも、総会はロシアの電力エネルギーセクターの完全な時代の終了を意味した。1992年に設立されたUESのリベラル改革の理念は、1998年に同社の最高責任者として立ち上がったアナトリー・チュバイスが提案した。彼は、 USの会長の職を、この職に在任して10年になる現在まで務めている。しかし、電力エネルギーセクター間の実際の改革が始まったのは、必要法律が採択された後の2003年からになってであった。

 

改革の初期の段階では、発電資産(発電所)は送電資産とは別けられていた。その後、火力発電所が地域を超越した6つの合同卸売発電会社(ロシア語表記でОГК)と地域ごとに分けられた14の地域発電会社(同ТГК)に統一された。これらはロシアの電力エネルギー部門で競争関係にあった。現在まで、これらの会社の大部分はすでに外国の投資家を含む大手民間投資家に売却された。民間部門に移ったのは、さらに、電力エネルギーセクターの販売、保守サービス、そして修理会社も同じだった。

 

「連邦電力網会社」という形にした幹線電力網を伝っての電力エネルギー送電と「システム・オペレーター」という形での指令作業は、独占的活動の範疇と見なし国家管理下に残った。尤も、細かいニュアンスはある。例えば、水力発電所は国家管理に残し、「ギドロ(水力)ОГК」社に統合された。さらに、最も最近には、今年の3月だが、電力エネルギー輸出入会社「インテル株式会社」が、ロシアの原子力発電所により経営される国営会社「ロスエネルゴアトム」社に譲渡された。(この会社はかつて一度もUESのグループ構成に入ったことはなかったが)。

 

改革立案者の構想では、ロシアの電力エネルギーの競争セクター(ОГКとТГК))には、今後、民間投資家の資金が川のように大量に流れ込むだろうとのことだ。これらの投資家のお陰で、電力エネルギーに対する増大する国内需要を常に満足するだろうと考えている。

 

実際、2007年には、すでに、発電所への民間投資は5000億ルーブルに達した。2008-2012年には、UESの最後の総会でチュバイスは、さらに4兆3000億ルーブルが投資され、そのお陰で、40ギガワットの新しい発電所が建設される。そして、市場の条件でも、ロシアの発電所への新しい民間投資家は、電力料率が恒常的に増大しているお陰もあり、投資のために資金を引き出すだろうと表明した。尤も、需要家にとっての深刻な問題はすでに現在電力網にアクセスするために高い料金を払うようになっていることだ。

 

政府は、さらに先を見て、2020年までにロシア国内の発電能力を現在の220ギガワットから406ギガワットに、楽観的予測では456ギガワット、つまり2倍に高める計画を立てている。従い、UESの改革の終了はロシア産業界に新しい挑戦状を叩きつけている。挑戦状とは、第一に、ロシアのエネルギー装置製造に対してである。新しい装置を稼動するためには、ロシアの電力エネルギーの新しい所有者にとって最も最新の機械装置を製造することが必要だからである。

 

祖国の発電装置産業は、新しい発電所の建設のために電力企業からの注文を満足することができるだろうか?あるいは、この市場は東西の競争相手に奪われてしまうだろうか?消滅したロシア独占国営企業UES社の代表者たちは、市場自身は、東西、ロシアであろうと、収まる処に収まるという自由発想的なリベラルな見解を示している。この様な見解を、4月のロシア・ノーボスチ通信社の記者会見で«ЕЭС»の技術部長ボリス・ヴァインジヒェルが述べた。ヴァインジヒェルの見解によると、発電装置部門のロシア市場は60%が祖国の生産であり40%は輸入品であるとしている。彼は、その際、輸入は主に、ロシアでは全く製造されていない大型ガスタービンが占めていると強調している。今後は、ヴァインジヒェルの予測では、発電装置製造部門のロシア市場の状況は大きな変化は起こらないだろう。

 

しかし、自分の市場で自分のシェアを維持するにはロシアの発電装置メーカーは難しい課題を解決する必要に迫られるだろう。例えば、最新式タービンの製造のためには、何よりもまず、祖国の工作機械メーカーでは現在提案できない特殊な工作機械が必要である。従い、このような課題を克服するためには祖国のエネルギー装置メーカーの刷新や編成変えが必要で、それにはまたしても少なからぬ資金が必要となるだろう。