アンドレイ・キスリャコフ、ノーヴォスチ通信社に特別寄稿。
現代の世界の宇宙開発が順調に発展するには緊密な国際協力と言う条件下でのみ可能であるということは正しい見方だ。あまりに大規模過ぎるプロジェクトが、宇宙を開発しようと試みる人類の前にはある。単独で行動すると如何なる資源も足りなくなる。しかし、矛盾は、このような協力について述べると、主導宇宙国が、それでも単独の開発国である可能性を最重要視していることにある。まず、宇宙に自由に飛行すること、単独の有人飛行計画を遂行する能力のことを言っている。
この意味において、ロシアには、積極的に利用できる自分自身の科学技術ポテンシャルを上手に拡大できる本当の宇宙の切り札を持っている。何を切り札に使い、誰とどのようにプレーするか?あるいは、もしかしたら、たまには一回勝負を見送るか?いじれにせよ切り札は沢山あるのだ。
ロシアが、打上げサービスの国際市場に積極的に推進している打上げミサイルから話しを始めよう。この分野では、楽観的な見通しは有り余るほどある。なぜなら、外国の宇宙船を宇宙軌道まで打上げるサービスで稼ぐ祖国ロシアの宇宙技術開発や製造企業の収益は年間平均で7億ドルに達する。ここでの、稼ぎ頭は、数10億の契約を成功裏に処理している重量級打上げミサイル「プロトン-M」だ。
専門家は、今後10年間は、最も収益の多い定位置軌道に宇宙船を打上げる回数が増えると予測しており、その中で、我がロシアの「プロトン」は順調に評価を高めていくだろう。フランス両ギアナのヨーロッパ宇宙会社「クル」の空港から中型ミサイル「ソユーズ-ST」の稼動がすぐに始まるところだ。「ロスコスモス」(ロシア宇宙局)の情報によると、近々の15年にこのミサイルは総額12億5000万ユーロに達する契約が締結されるだろうとのことだ。
さらに、「アンガラ」計画で製造される打上げミサイルは、近い将来的にロシアに、あらゆるクラスの宇宙打上げミサイルを市場に披露させ、そのことにより、ロシアは最も安定した高い収益を確保することが可能になるだろう。しかし、このことに関連し、1つの問題がまだ解決されないままになっている。ロシアの打上げミサイルの分野でロシアの設備は明らかに優位を保っている現在、なぜ、我がロシアの打上げサービスの市場での収益は、例えば、ヨーロッパのコンツェルン(財閥)「アリアンスペース」、に劣るのだろうか?どうやら、今日、商業上の成功は、純粋に技術的要因だけでは決まらないということなのだろう。
今度は、有人飛行計画、正確には、軌道へ人間を参加させて遂行されている現時点では世界で唯一の宇宙プロジェクト、国際宇宙ステーション(MKC)計画、に目を向けて見よう。一見、この場合のロシアの立場は成功が約束されているように見える。なぜなら、2003年のアメリカの宇宙船「コロンビア」号の惨事の後、ロシアは1国だけでMKC計画を「背負った」。現在はと言えば、「スペイス・シャトル」計画を2010年までに中止させるが、その時期までには新しいアメリカの宇宙船「オリオン」が明らかに準備が間に合わないだろうという背景の下では、ロシアの宇宙船「ソユーズ」は、向こう数年間はMKCまでの各国のクルーを送り届ける唯一の手段として残ることになるだろう。
経済的には、一見して、すべて素晴らしく見える。ロスコスモスの最も重みのある契約としては、MKCまでの送り届け、4年間でアメリカの宇宙飛行士と宇宙貨物を地球への返還、そして、宇宙船、救済船、としての「ソユーズ」の利用、という目的が検討されている2007年4月に締結された総額7億1900万ドルのNASAとの合意を挙げることができる。どうやら、これに結びつく政治的問題も解決したようだ。9月の最終週の週末に、アメリカの議会は最終的に、反イラン処罰行動に「ソユーズ」を使うことになっていた予定を処罰行動には使わない法令を承認した。かくして、NASAは2016年まで、「ソユーズ」の船内でMKCまで自国の宇宙飛行士を飛行させることに対しロシアに対価を支払いすることが許可された。
しかし、現在、この計画にロシアが参加しても目に見える将来では(近未来的には)、何らの利益をもたらさないことは明らかだ。それは専門家でなくとも判る。経済と実利の面から見れば、新しい宇宙技術の開発と製造などはもっと延期してもよい。
最近の議会の決定をNASA所長のマイケル・グリフィンは勝利と評価した。他方、彼は、幾度となく、MKCへの飛行事業でロシアへの依存に陥る将来に愚痴をこぼした。さらに、この事態から逃れるために、NASAでは、彼の命令により、宇宙船「スペイス・シャトル」の稼動期間を2010年に停止するのではなくもっと延ばす可能性についての専門的評価が行われている。
有人飛行の分野でアメリカがロシアに依存する可能性に対しての明らかな不満は、次期大統領候補の2人も表明している。しかも、バラク・オバマは、自分が大統領に選ばれた場合、シャトルに200万ドル追加資金を出すことを約束している。
換言すれば、アメリカの議会は、いやいやながら、このようなステップを踏み出している。この証左になっているのが、例えば、政治問題アメリカ国務次官ウイリヤム・バーンスやスパイ委員会議員ビル・ネルソンの露骨な説明が物語っている。彼らは、NASA自身が「オリオン」計画の遅れのためにこのような状況を招きその責任はNASA自身にあるとの意見を持っている。アメリカの宇宙飛行士をいかにMKCに到着させるか出口のない状況が、議会に然るべき法令を承認させる一因になった。
歯を食いしばって(我慢して)このような協力をしても、何ら実りある成果は得られないことは想像に難くない。さらに、生産設備が制限されているため国際計画で有人飛行手段としての「ソユーズ」計画に今後も頼ることは、将来も、開発がもう1年も停滞している自国の新しい宇宙輸送システムの創設にブレーキを掛けることになるだろう。
もしかしたら、MKC計画全体とその計画へ我が国が参加することを根底から見直す必要があるかもしれない。最後に、言葉上ではなく、実際に、新しい有人飛行技術の製造を速める必要があるのかもしれない。その時は手元に実際に切り札を持つ国が残ることになろう。