カバルジノ・バルカーリの首都ナリチックを襲った武装集団の壊滅作戦が丸一昼夜に亘り行われた。ロシア外務省の概算データでは150人と言われるグループに分かれたテロリストの国際部隊は、この壊滅作戦の前、約2時間に亘り、彼らの作戦を繰り返した。自動小銃や機関銃、擲弾筒で、町の軍事施設とそこに配備されていた部隊に射撃を加え、武器庫占領を試み、地元の住民に向けて発砲していた。
ナリチク攻撃とその後のテロ撲滅作戦の結果、暫定データでは武装グループから死者80人、生存逮捕者27人、司法当局側からは死者と26人、負傷者59人が出た。テロリストは、ナリチクの平和な市民を19人殺害、110人に負傷を負わせた。
ナリチク攻撃は、極めて大胆に行なわれ、よく準備され、スケールが大きいとさえ言え、平和な市民に犠牲を与えたが、北カフカスで暗躍しているテロリストのこの攻撃は、まさにここで、最近数年間では初めての、最も深刻でかつ厳しい反撃を受けたと言える。テロリストは、昨年の6月22日にイングーシの首都ナズラニで起こしたような町の制圧に失敗したのだ。彼らは、1年前ベスランで地元の小学校を占拠したあと漂わせたあの狼狽や大混乱を呼び起こすことは、このナリチクでは出来なかった。従い、ナリチクでは平和な市民は冷静で、犠牲者は桁違いに少なかった。
しかし同時に、今回のテロ攻撃は、北カフカスでのテロの脅威を完全に制圧するにはまだ程遠いことも示した。しかしそれでも、司法当局はこの複雑な状況に対応でき、しかも、その対応状況はかつてないほど周到だったと評価したロシア南連邦管区ロシア大統領全権代表の言明には賛同できる。
しかし、このような用意周到な準備ができていても、北カフカスでの新しい攻撃が別の場所で繰り返されないためにテロリストの完全撲滅闘争を成功させるには全く不十分である。チェチェン以外の地域に出ている国際テロリストは、仕事があり生活状態がそこそこ成り立っていると考えている人よりもこの地域では数倍も多くいる失業状態の若者を自分の旗印にもとに誘き寄せ、地元権力からの買収や弱み、経済的不安定を利用しながら、広範に亘り、北カフカス地域に攻撃を掛けている。
ソ連時代からこの国の首長の座にある前大統領ワレリー・ココフが比較的若いビジネスマンでロシア国会下院議員のアルセン・カノコフにその座を譲ってからまだ1ヶ月が経っていないカバルジノ・バルカリヤ共和国は、ナリチクへの攻撃の組織者には、北カフカスで自己の力を示すことができ状態を不安定させることができる弱い環に見えたのだろう。しかし組織者にはそれがベスランで出来なかった。そしてナリチクでも出来なかった。
ナリチクでの出来事についての主要結論を出し、事件の分析は行なわなければならないが、その際、政府や大統領自らのような連邦の中心権力も積極的に参加してなうべきである。今回のナリチク攻撃は、単に、「カフカス内部」すなわちロシア内部の出来事だけではないことを認識する必要がある。その前線が最近アメリカデモイギリスでもスペインでもアフリカでもアジアでもそしてアラブ中東諸国でも発生しているこの文明に反対するテロという名の「戦争」であることを考えれば、それぞれのテロは、もはや世界的規模の悲劇的出来事と言える。
北カフカスでのロシアのテロ撲滅行為の中に長い間テロ撲滅の全世界的闘争の気運を感じることを期待していなかった組織、欧州評議会議員総会(PACE)の議長、レネ・ヴァン・デル・リンデンが、今は、テロ攻撃を受けているロシア国民との完全な連帯を表明し特別声明で呼掛けた。「私は、この野蛮な攻撃を断固非難する。この攻撃を行なった者は犯罪人と同罪だ。テロには何ら正当化される理由もなくまたあってはならない」とPACE議長は力説した。
ナリチク攻撃の組織者は2度敗北した。最初は、彼らの攻撃が当局の反撃で窒息し自ら壊滅してしまった時。そして、2回目は彼らが国際社会により批判された時」である。