アナトリー・ゴリェフ、ロシア・ノーヴォスチ通信社に寄稿。
ロシアの億万長者にとって、アメリカの雑誌「Forbes」の23回目の年次レーティングはがっかりするものだった。わずか1年の間に、世界で最も裕福な人達のリストに入っているロシア人の数は、87人から32人に減った。しかも、モスクワはニューヨークに、わずか1年前に、石油の国際価格高騰とアメリカの金融危機が例えロシアを襲うとしてもそれは触るだけだろうとの投資家の確信を背景に獲得していた世界の首都のタイトルを明け渡すことになった。
現在、すべての人が、この期待は確信は実現しなかったことを知っている。そしてその結果、「黄金のモスクワ」は、ニューヨークとロンドンという従来の2つのリーダーに、億万長者の数を、数の上で譲るjことになった。運命の皮肉で、ロシアが初めてForbesリストの中でリーダーの一角、そのトロイカ(3本柱、3人がリストに載った)を占めるようになった5年前の状況に戻ってしまった。
この打撃がどれほど力が猛威を振るったかについては、それぞれ個々の億万長者の「不成功の歴史」から論ずることができる。昨年のロシアの一番の富裕者オレグ・デリパスカは、リストでは164番目に落ちた。下落幅は155位の後退で、それは、2008年始めにForbes誌がデリパスカの資産を280億ドルと試算していたことを思えばこの下落がいかに大きいか理解できる。換言すれば、Forbesの専門家は、ロシアのアルミニウム王は1年の間に全財産の88%を失ったことになる。
Forbes誌は、現在ミハイル・プロホロフがロシアで一番の億万長者になったとし、その資産は95億ドルと算定している。
イギリスの「チェルシー」の所有者ロマン・アブラモッチは、ほぼ「TOP-50」に入った。Forbesの専門家の評価では、85億ドルの資産を有する彼は誉ある51番目の地位を獲得したとしている。アブラモッチに少し劣るのは、その資産が78億ドル(57位)と評価されるルックオイル社のオーナー、ヴァギト・アレクペロフだ。
何が、ロシアの億万長者達のランクを引き下げ、以前獲得した地位から転覆させたのだろうか?専門家の意見では、問題は石油価格の下落だけでなく、その他のロシアが輸出する伝統的商品(とりわけ、金属)への需要減退もあるとしている。Forbesのリストから飛び散った多くの富裕者にとって、宿命的な役割を演じたのは、証券市場への投資と、さらに、比較的安いそして「長期」の西側の融資に惹かれたことである。結果はあまりに良く知られている。前者は、昨年の相場の結果、数十いや数百パーセントも価値を失い、後者は本当の「罠」になった。
しかし、なぜロシアがこのような重大な損失を蒙ったのであろうか?なぜなら、世界の株式市場の下落と負債問題はForbesのリストに登場するすべての人にとって同じ程度に病的だったはずだ。ウオッチャーは、ロシア人が大きな打撃を受けたのは、彼らの資産の増え方があまりに急速だったことにもあると考えている。リストに登場する欧米の億万長者の中には、第2世代や第3世代の富裕者が多くいる。加えて、彼らの中には、今回のような強力な経済危機を過去に経験したのは一回だけでない者もいる。ロシアはと言えば、「若い」億万長者は勝利から勝利へと進むことしか知らなかった。従い、今回の危機は彼らの多くにとってあまりに強烈な試練になった。
しかしながら、この黒々としたコールタールのバケツの中で一杯のスプーンの蜜のための場所も発見された。Forbesの専門家は、ロシアは、確かに蒙った損失は大きいが、投資するには依然として極めて魅力ある国に違いないと指摘している。言い換えれば、危機を克服するに連れて、リストに占めるロシアの億万長者の数は、再び増え始めるだろうとの期待は大きい。