国家の経済への関与は是か非か?
11:0816/02/2007
経済解説員ニーナ・クリコワ執筆

最近数週間、ロシアの経済の状況について論議した際に、すぐに2つの国際的に名の通った組織が、国家が国内経済に強い影響を持つようになっているという同一の問題で懸念を表明した。この傾向は実際はどの程度の懸念になるのだろうか?
経済協力発展協会は、ロシアに関する展望の定例発表で、国家の国内経済の役割の増大は好ましくない傾向だと表明した。その後、世界銀行の専門家も演説の中で、ロシアは国際市場で競争力を高めるためには経済活動のプロセスを中央化から離す必要があるとした。

国家のロシアで起こっている社会や経済現象への影響は確かに強くなっている。ほんの3年前までは、ロシア政権は、むしろ自由な発想を支持し、市場原理の促進と革新的環境の必要性を表明していた。現在は、これらの課題とは別に、国の指導部は国家による経済資産のコントロールを強化する方向で取組んでいる。
第一に、これは、ロシアの戦略的に重要な分野である国営企業による資産の拡大が関係している。先日、ロシアの第一副首相でロシア「ガスプロム」の幹部会会長のドミトリー・メドヴェジェフは、ガスプロムは、生産分与協定をベースにロシアで活動しているサハリン-2プロジェクトへの参入についてShellコンツェルンと取引をする意向があると述べた。この意向が論議され始めたのは最近だが、メドヴェジェフの言葉によれば、交渉は現在終わりに近づき、両者は満足する方向で交渉を終了することになっているとのことだ。
それ以外にも、プーチン大統領に指令で、統合航空会社が設立され、原子力分野や木材、さらには自動車製造の分野でも国家による企業統合が検討されている。
ロシア政権のこれらの行為を批判する主な理由としては次のことが挙げられる。第一に、外国の観察者の見方であるが、この傾向は自由な市場経済の原則に逆らうことになる。クレムリンは、どうやら、自分のために国家資本主義を展開し、次々に収益の上がる企業をポケットに入れている。第二に、国家の支援を受け競争の厳しさを感じない巨大国営企業の設立は、ロシア経済が国際競争力を高めて行く上でプラスにならないとしている。第三に、現在起きていることは、成功している民間企業が非効率な国営企業に吸収されてしまうというものである。
基本的に、これらすべての懸念は根拠がないわけではない。経済において市場原理に即さないセクターが広がっていけば、競争の自由は狭められるだろう。そして、その結果、外国投資家に、ロシア経済を検討する場合、ロシアは予測不可能だとする懸念を持たれてしまう。つまり、国内の投資環境の悪化につながる。しかし、客観的なデータでは、ロシアの投資環境は逆に上がっていることが示されている。ロシアで活動する外国投資家の84%にアンケートした結果によれば、彼らはロシアでの活動は成功しているとし94%の投資家活動範囲を広げたいと回答している。
さらに、ロシア政権の公式な見解は、国家資産の統合は国際市場でもロシアの競争力を高めているとの立場を取っている。なぜなら、もし国際企業に対抗できる企業をロシア国内に作らなければ国際市場への進出を実現することなど実質的に不可能である。現在ロシアには近代製造が発展している分野が個別に存在する。例えば、エネルギー、冶金、軍事航空機製造、化学、などだ。これらの幾つかは、現在より規模を大きくした組織的な企業を設立させて活動させれば国際市場にも十分に太刀打ちできるはずだ。これらの分野では、国際舞台に進出し、世界の巨人と競争していくための統合企業を設立させる計画がある。国家は、この分野で提案があれば支援していく意向を示しているが、すべての分野に参加するというにはまだ程遠い状況だ。例えば、ロシアのコンツェルン「ルス・アル」と「SUアル」とスイスの「Glencore」からなる世界でも最大級のアルミニウム会社「ロシア・アルミニウム」のつい最近の合併はロシア国家は参入しなかった。
もちろん、起こっている状況は理想的は言えない。第一に、このような経済では、全経済分野の均等な発展を保証する代わりに、特定のセクターの優先的発展のために特別条件が作られてしまうからだ。しかし、国際市場の広がっているグローバル化という条件の中で、ロシアが将来的に展望が持て他国が従事していない分野が益々少なくなっている時に、ロシアの取る道として他の道がありうるだろうか?もちろん、ロシアにとって、経済の革新や多様性が必要であることは当然である。この点については国内では非常に多くが論議されており、すでにそのように進み始めている部分もある。しかし直ぐにうまくわけではない。自力で完全に競争力のある力をつけるには10年は掛かるだろう。ましてロシアは今、国際市場での競争にすでに負けているのだ。どうやら、政権は、せめて何らかの方向でも良いから、原料分野でも良いし、冶金分野でも良いし、今直ぐ対等に競争できる分野を持つことが良いと考えたのだ。これらの分野で経験を積み、後刻、他の分野の産業を国際市場での競争力をつけさせることが良いことだと考えたのだ。
国家は非常に悪い所有物としての認識も部分的にしか正しくない。実際、ロシアの大企業のトップには、市場経済の条件で効率よく働ける能力が十分にある近代的な指導者が立っている。そして、これらの企業に課された課題、つまり、グローバルな国際的リーダーと対等に闘うこと、は、企業の効率、透明性、資本の成長につながる。そうあらねば、また、世界のリーダーになることはできない。ロシアの国営企業は対外市場での位置取り(ポジショニング)にすでに積極的に進出している。今夏のロンドンでの「ロスネフチ」のIPO(新株上場)や2007年に控えた「ヴェネシトルグバンク」と「統一電力会社」のIPOは、ロシアが大きな国営会社を設立するだけでなくその資産の一部を外国投資家に提示した。
ロシアが自由な市場経済原理から退去するとの論評については、現代の世界では経済を発展させる方法で普遍的なモデルはあり得ないことを忘れてはならない。そして、どの程度国家が経済成長の刺激行為に参加するかはそれぞれの国が自国の現実に照らして決めるべきだ。ロシアのこのような道を選んだのは、国家の経済における近代的強化は1990年代の無統制に私有化が行なわれた時代に横行したあの専横に対し独自に回答を出した結果と言える。あの時代に戻ろうと希望するものは誰もいない。その教訓として、国家は、資産の外国流出を食い止め、所有権の頻繁に入れ替わった時代から脱却し(所有者を明確にして)経済が本当に発展する段階に移行するのを確実にさせる安定性と信頼性の保証人として国民を保証する大きな機能と見なされている。
国家の積極的な行為は、経済の個々の分野の強化を促進するだけでなく、その分野をリーダーの地位に押し上げるかも知れない可能性がある。しかし、その際、全体としてロシアの経済を総合的に発展させるためには、国際市場には向いていない別のセクターのこと、これらセクターの近代化や発展についても忘れてはならない。