ヴラッド・グリンケヴィッチ、タチヤナ・シニーツィナ、ノーヴォスチ通信社解説員。
中国での乳酸品(子供食品、乳酸飲料、冷凍品)の中に、プラスチックやとワニスの製造に使われる人間にとって有害な化学物質であるメラミンが大量に発見されたことは、食品中ではこの物質はどの程度有害な化学薬品なのか、なぜ検査機関が危険食品を差し押さえなかったのか、このようなことはロシアでも起こり得るか、など、質問の突風が吹き寄せた。
まず、耳に響く発音では殆ど差のない2つの物質、「メラニン」と「メラミン」、について解明する必要がある。不良品乳酸混入の犠牲者がすでに5万3千人なった中国での悲劇の発表の中で、ある時は「メラニン」、ある時は「メラミン」という言葉が使われ、人々は当惑している。「問題になるのはメラニンでないことは明らかだ。なぜなら、これは、生物発生物質であり。それほどの毒性があるはずがないからだ。悲劇の原因を作ったのは、正確な情報を我々は所有しているわけではないが、どう見てもメラミンである」と化学研究博士でモスクワ国立大学職員のマリナ・ユロフスカヤは判断している。
実際、中国で害をもたらした物質は、日焼けした後に人体に現れ、太陽の紫外線から守ってくれる我々に知られた褐色の皮膚色素、メラニンではない。害をもたらしたのは、無色無臭の結晶を持ち、水に溶けないメラミンである。この化学物質は、産業の過程で形成され、ポリマー(重合体)素材やプラスチック、ワニス、塗料の製造の際、そして繊維組織や紙、その他を加工する過程で使用される。メラミンは、世界で広く需要のあるこの製品を最大30%まで現在製造している中国を初めとし、多くの国で製造されている。
現時点では、中国の食品製造企業以外の何処か別の場所で発見されたという情報はない。結果のいい加減な認識不足だろうか?「いずれにせよ、化学は、これに従事している人には、非常に悪く、なんのために企業にとってこれが必要だったのか全く見当がつかない」と化学研究博士で、「化学の安全」ロシア連盟会長のレフ・フョードロフは述べている。製造者のずさんさは一目瞭然だ。
一方、人間の胃には、メラミンを消化する能力のある酵素は存在しない。有機物に入り込んで、メラミンは、腎臓、膀胱、その他器官に沈殿し、それらの機能を抑制する。
ロシア・ノーヴォスチ通信社の質問に回答した専門家たちは、乳酸品の生産の過程では、危険物質の偶然の混入が起こらないように技術的処置が採られていると確信している。「メラミンは故意に添加され、どうやら、それは処方により行われたようだ。中国ではもし規準でこれらの物質の利用が許可されているならば、規準に違反した行動になっていないとの推測が脳裏をよぎる」と「ヌトリテック」企業グループの投資家との渉外部長のユーリー・クナシェフは確信を持って語っている。
しかし、周知のように、メラミンは、とりわけ、中国領に企業を持つ著名な西側製造企業の食品の中にも発見された。クナシェフの意見では、この事実は、簡単に説明がつくとしている。西側企業の大部分は、対等の原則で中国でビジネスを展開している。資本の半分は中国人に所属し、生産とマネジメントを行っている。従い、メラミンと中国人が「仲良し」なのは長期間続いており、食品にたんぱく質の含有指数を高めるためにメラミンを利用している。
約1年前、アメリカでスキャンダルで燃え上がった。数千の動物、犬、猫が、危険な化学薬品の含まれた中国製飼料を摂取し、病気、場合によっては死んだ事件が起きた。あるいは大騒ぎが起こった。アメリカでは、危険な食品の販売は禁止されたが、どうやら、アメリカの動物の悲しい経験に中国の子供食品の専門家は驚かなかったようだ。
ロシアの専門家には、食品のたんぱく質濃度を高めるためにメラミンを使う考えは、どう控えめに見ても、賛成し兼ねる。「たんぱく質の含有量を高めるためなら、人間に安全でもっと安い有機物添加、例えば、乳糖(ラクトーゼ)を使うことができるはずだ。メラミンは一番安い添加物とは言えない」とユーリー・クナシェフは説明する。
そうは言っても、メラミン使用を説明できる1つの説明はある。匿名の条件で、乳酸品のある製造企業の代表は、乳酸品の中のメラミンは、競争相手の食品の信用失墜の計画的行為の結果であるとの可能性を示唆した。「私は、中国の食品プロジェクトに参加していた西側投資家たちが、似たような事件の後、活動を縮小させ、二束三文で中国企業に資産を売却することを余儀なくされた例を数多く知っている」とノーボスチ通信社の質問に回答した。
たった1つの慰めは、ロシアでは、このような事件は実質的に考えられないことだ。「中国の牛乳はロシアにはないし、今後もない」と農業市場景気研究所専門家のタチヤナ・ルイバロヴァはノーボスチ通信社に言明した。一回だけの非常に制限された宣伝の意味の納入が2007年のロシア・中国友好年の一環で「I-li」社によって行なわれたことがある。しかし、上述の「ヌトゥリテック」社ユーリー・クナシェフは子供食品を製造しているロシアの企業がメラミンを使用したという例は一度も聞いたことがないことを発表した。そして、中国製食品は、情報によれば、ロシア市場に来ない。しかし、偶然の可能性、分かり易く言えば、中国から極東への密輸納入の可能性はないとは言い切れない。