ドミトリー・ザモロヂッコフ、ロシア科学アカデミー環境及び森林生産性問題研究センター次長
日本の北海道、洞爺湖々岸で7月7日に開催されるG8サミットでは、地球温暖化の否定的要素抑制に関する各国の国家学術アカデミーの6つの提案が論議される。気候抑制のためのこの学術「処方箋」として研究されている提案の中には、森林問題も含まれている。
地球上に森林量の増殖が必要であること何らの疑いも残さない。森林は一方で炭素を吸収し、他方では大気に「酸素枕」を提供するからだ。ケニアのナイロビ大学のワンガリ・マータイ(Wangari Maathai)教授(女性)は、人々に環境への関心を高めさせ、アフリカ人にアフリカ大陸に百万本の植樹を呼び掛けた。2004年には、その功績を称えノーベル平和賞が授与された。これがアフリカ大陸だけでなく、また無数にそして永遠に植樹すればもっと大きな効果を得ることは確実だ。
ロシアの莫大な森林資源(全世界の24%を占める)は、近年は、毎年確実に、約3億8000万の炭酸ガスを吸収している。これは、ロシアの全鉱物燃料の燃焼が発生させる排気量の5分の1に相当する。これは驚くべきことだ。巨大な森林用地を持つロシアなら、「緑の衛生員」としての活動で優秀な成績を残すことができるだろう。状況を少し説明したい。安定した森林環境体系では、結果として大気から炭酸が必要な光合成というプロセスは、植物やキノコやバクテリアのような非常に多くの他給栄養有機物が呼吸する際に排出するCO2を吸収している。従い、成熟した古い森林は、炭酸ガスのバランスとしてはゼロに近い。
このような法則性は、野生地帯にある原生林だけでなく人間が管理できる森林(管理林)についても当て嵌まる。森林体系へのプラスとマイナス作用が安定しているならば、森林体系の中の炭酸ガスのバランスはゼロに近くなる。
森林地帯への外部影響の度合いが変化すれば、炭素量も変化する。破壊的影響(例えば、火災の頻度が高くなるなど)の規模が増大すれば、森林は炭素を失い、温室効果ガスの源泉になる。影響の程度が低くなると、逆に、大気から炭酸ガスの流出を導く。
まさにこのような状態がロシアの管理林で起こっている。国内では、1940年代から1990年代初めまで毎年約3億5000万m3の森林が伐採されていた。社会経済改革期には森林伐採量は約3分の1に減少した。最近では森林伐採量は安定し約1億8000m3になった。ソ連時代と比較して森林伐採量の減少がロシアの管理林に炭酸ガスが流入する主たる原因になった。
森林地帯の炭素量の変動は永遠に続くことはない。管理林の体系は、20-30年以内に新しい負荷のレヴェルに順応しており、そして、炭素予算は、バランスを保つように戻っている。森林が炭酸ガスを長期的にそして安定的に確実に吸収するためには、さらなる追加策が必要だ。このような策としてロシアでは、(500-3000万ヘクタールの範囲で評価は異なるが)、質の低下したあるいは農地利用されなくなった土地に新しい森林を植樹する社会計画が採択された。プロジェクトは森林運営局「ロスレスホズ」が遂行する。生命力をつけながら、若い農園(プランテーション)は、炭酸を貪欲に吸収し大気を浄化する。従い、このような農園は「京都森林」という名前がつけられた。
面積3500ヘクタールの最初の人の手による緑塊が昨年、沿ボルガ地区のウリヤノフスク州とニジェゴロド州に出来た。植樹プロセスは停止していない。今年は若い苗木が9300ヘクタールに植えられた。そして2017年までには、ロシア国内の様々な地域に「京都森林」を植える計画になっている。植木は、植樹後80-100年に亘り、炭素を吸収する能力を持つだろう。これは、大気を1億8500万トンの炭酸ガスが放出されることから防ぐことになる。
大気汚染を防ぐための闘いを支援する別の効果的な「森林」方法も戦闘体制に入っている。それは森林を伐採、搬出、製材する時に発生する森林廃棄物を有効に利用することだ。上述の「ロスレスホズ」の専門家たちは、遠く離れた村落に公共エネルギーを供給する際、化石燃料から森林伐採後に残る伐採木端でエネルギー供給へ移行するための「森林エネルギー」社会計画を作成した。かつては専ら暖炉や薪に利用していた祖先の経験がある意味で見直されていると言って良い。現在では、これは、木材粒(パレット)、圧縮された樹皮、鋸で挽いた木材などの新しいタイプの木材燃料を指している。
種々の国際気候協定、とりわけ「京都議定書」では、天然資源を再利用可能燃料(この場合、生物燃料)への代替が、温室効果ガスの排出の直接の削減と見なされている。そのエネルギーが80億トンの燃料に相当する140-150億トンのバイオマス(一定地域の生物の現存量)がロシア全土で生産されている。今の所は現実に利用されているのはわずか0,5%だ。残りは実際の利用できるように実現するだけだが、その方向に向かった最初の一歩がすでに踏み出されたことは確かだ。
伐採や製材の段階で発生する大量の木材廃棄物は、熱あるいは電気エネルギー製造技術を徹底して導入することを可能にしている。試算によると、「森林エネルギー」計画が実現すれば、ロシアは2020年までに、毎年3億9000万トンの炭酸ガス排出を削減することが可能になる。