ロシアの森林火事
11:4503/09/2008

 

 

タチヤナ・シニーツィナ、ロシア・ノーヴォスチ通信社、解説員。

 

 

ロシアの森林が燃えさかっている。他に言いようがない。森林業者の表現によると、最も燃えやすい8月には、国内の森林火災の「発生曲線」は通常最高点をつける。今回は曲線は昨年よりもはるかに高くなった。ロスレスホーズ(ロシア森林局)の実際のデータによれば、先週の1週間だけでも、森林地帯で360件以上の火災が発生し、約2400ヘクタールの森林が焼失した。火災全体の年間発生件数も事態の深刻さを物語っている。8ヶ月で約23000件の火災が発生し、火は2007年の同期比より1,7倍も多い森林を「食」した。火の犠牲になった面積は約250万ヘクタールに達している。

 

まだ、ピョートル1世の時代に、火災撲滅のため、住民が森林への入林禁止令がしかれていた。そして、現在、23の連邦首長体で森林訪問の完全禁止体制がしかれている。従来の伝統も復活するようになった。昔の時代のように、現在、森林発火の主要原因として残っているのは80%は「人的要素」だ。自然の要素、雷、による発火ははるかに少ない。

 

地球の約4分の1の領地を占めるロシアの森林は、95%はボレアル期(8000-10000年前の冷温・乾燥期)に当たる寒帯性の森林で、火災の危険のある針葉樹で、火薬のようにぱっと燃え上がる性質がある。しかも、燃えやすい燃焼地帯から発生するエアゾール(噴霧剤)は火山の噴出に匹敵する。このような地帯はロシアに広大に存在する。実質的に火は、公式データで公表される面積よりもはるかの広い。シベリアと極東のような北方地区は記録を登録できるインフラ設備が備わっていないため火災そのものの記録が不可能なだけで、このような「野放し」状態の森林地帯が多く、約270万ヘクタールも存在する。

 

火は、もちろん、威力ある自然の力で、撲滅するのは至難のわざだ。しかも、ウラルやシベリア、極東など森林に富む地区はロシアの火災にとって「お気に入り」地区である。

 

森林での際限の火災に対抗するにはどのようにすればよいのか?専門家の処方箋が、森林の発展の管理の戦略に対応する新しい書類に明記されている。書類は、ロスレスホズの専門家ともに共同で作成され、すでに、政府に上程される段階にある。提案された消火戦略の骨子は何か?「我々は中央のみが消火の中心になるのではなく、従来がそうであったように、地方も消火活動の主要センターの実践に戻る必要がある。そのためには森林法典の修正が必要である」とロシア科学アカデミー正会員のアレクサンドル・イサコフは説明する。

 

新しい森林法典は、明らかに失敗である。その多くの論理は機能していない。法典の条項と法案が公けに出た日から常にあらゆる法令に修正され続けている。「市場ロビー活動家は森林を民間業者に譲渡させるよう活動しようとした。しかしこれはうまく行かず、国家所有に残ったままだ。しかし、市場活動家は、国家の役割をなくすためにあらゆることを行なった。これは、経営構造としても資源としても森林には適さなかった。そして害以外には、何ももたらなかった」と上述のイサコフは指摘する。

 

現在、現実は、プロジェクト作成者は、森林管理の古い実証ずみの経験を復活させることにより、プロジェクトの間違いを認め新しい法典の基礎になっている疑わしいドクマ(独断)から手を引かざるを得ない状況になっているのが現状である。

 

森林管理の定着した実証済みのシステムの崩壊を専門家は、現行の森林法の最も大きい間違いであると判断している。森林は、無秩序に連邦首長体の所有に譲渡され、やはり無秩序に、連邦の都合で管理された。ある場所では、自然保護警備組織、また別の場所では、森林産業設備が管理している。「問題は、さらに、管理機能がロスレスホズに移り、管理権は他の機関、つまり、その構造上、このような機能を遂行する能力を持っていないロスプリロドナドゾールが移転されたことにもある」と上述のイサエフは指摘する。

 

火災に見舞われる森林を見ると全心臓が縮む思いだ。しかし、火事は自然の要素だ。火災は、重大な環境崩壊及び経済損失を導く破壊行為であるだけでもない。火災には肯定的要素もある。火事は、森林の質の低下を防ぎ、強大な衛生機能を実現するある種の自然のメカニズムだ。古い草木や繁みを燃焼させ、火事は若い植物相のための空間を解放し、このようにして、野性動物の生息環境を改善し、病気や有害林の根源を根絶するのに役立つ。

 

多くの森林諸国は、森林状態の向上のために、そして大量の火災を防ぐために、特別な管理された燃焼を行なうことにより「管理火災」という方法を導入している。「ロシアにはこのようなシステムはクラスノヤルスクの専門家により森林伐採の際に十分に開発されている。火事は、もちろん、森林を若くし、樹齢を同一にし、最も生産性の高い森林が登場する可能性を与える。しかし、すべてのことを念頭に入れて置かねばならない。現在は論議する必要のないが、効果的で組織的なシステムが必要であるというテーマも論議する必要があることも念頭に入れて置かねばならない」とイサエフは指摘する。

 

学者は、火災撲滅問題に対し基本的に新しいアプローチを開発した。例えば、消火する必要のある火災と自然の成り行きに任せる方が合理的な火災に「火災を区分け」することを提案している。

 

火災のあと、森林は、完全な熟成年齢、「繁茂林」の樹齢である300-400年までに復活する。シベリアでは、新しく生まれる過程はもっと遅い。なぜなら、セイヨウスギは500年あるいはそれ以上に聳え立ち成長する。火災は、セイヨウスギのこぶが目立つのに役立ち、そのようにして若い森林世代の誕生を促進させる。

 

自然は、当然のごとく、火災に見舞われる。しかし我々の消費世界にとっては、これらの損失は無視できない。一旦森林が燃えたら再び生えて来るまで500年は待たなければならない。