石油マネーの豪雨の恩恵を享受できるのは誰?
18:5509/07/2008

 

マクシム・クランス、ロシア・ノーボスチ通信社、政治解説員。

 

先日発表された世界の大富豪の資産状況に関する国際会社Merrill LynchとCapgeminiの年次報告では、ロシアの最新の歴史で明確な傾向を確認することができた。裕福なロシア人は益々裕福になっていることである。祖国のbillionaire(億万ドル長者)とMillionaire(百万ドル長者)軍に、とりわけエネルギー資源のとてつもない高騰のお陰で、2007年には、17000人の兵員がこれらの富裕層の仲間入りし、現在はその数は13万6000人に達する。地球全体での長裕福者の増加数は6%に留まっているが、ロシアに限っては14,4%も増えた。

 

このように、ロシアのそれぞれの1000人のうち1人が、以前言われていたことだが、これら富豪者に入るわけであるが、もしかしたら、この指標は、これらの幸運者だけでなく、ロシアのすべての人々が年を追って裕福になっていることを示していなければならない。ここにロススタト(ロシア統計局)が確認している事実がある。2005年には、平均的ロシア人は、ドル換算して303ドルの給料だったが、2006年には391ドル、そして昨年は529ドルになった。しかし、これは単なる平均の数字であることに留意する必要がある。もし、ついでに、私の給料とすべての人が周知の「チュクチの主」(アブラモヴィッチ)の収入を足算し、それにオレンブルグの村の出身のどこかの高齢者の年金3691ルーブル90コペイカを加え平均すると、恐らく、平均額はかなり高い数字を引き出すことができるだろう。

 

あるいはここでさらに別の統計を引き出すことができる。本年の第一四半期でだけで、全ロシア人の「白い」給料(闇給料ではない課税された給料)は5兆2700億ルーブルに達した。ところで、昨年より1兆ルーブル以上増えた。しかし、これらの額の約3分の2は、社会の10%の「金のパーセンテージ(成金)」が占めている。社会の社会層のレヴェルを示すジニー係数は、文字通り針が極限まで振れている。10%の最も裕福な層の所得は、10%の最も貧困な人々の給料の16,8倍を超えている。そして、複数の情報では、約10万人のmillionaireと74人のbillionaireが住んでいるモスクワではもっと差が大きく50倍以上である。しかもこの溝はさらに深まる一方だ。

 

誰が何と言おうともこの溝はソ連時代にも存在していた。社会全体の公平の社会ではこの公平は一度もなかった。党関係の一覧表の給料がそれほど高くないにしても、その代わり驚くほど異なるのはその現実の「消費の籠」だ。ここに自分の古文書保管所にグラノフスキー通り(昔の共産党本部の近くにあった通り)で配給者からの食糧品注文用紙を見つけた。もし、誰も若い年齢のために覚えていないか知らない人がいると思うが、すべてが不足していた時代には、エリートの代表には美味しい食糧を半額で分配する特殊分配場所があった。現在、食糧が溢れる時代は、「ミコヤン」のソーセージ、赤キャビア、ブルガリアのキュウリ、インスタントコーヒー、「記念」クッキー.... しかし、大部分の人にはこれは手の届かないものであった。「高度に快適な」アパート、外国出張、業務用乗用車、クレムリン保養所と呼ばれた共産党幹部だけが使用できた第4局サナトリウム、と当時の用紙に書かれたこの「メニュー」の内容は滑稽に見える。

 

もちろん、すべてのこれらの恩恵は、新しい支配層を形成しているかつての「赤い工場長」(共産党員の社長のこと)、共産党青年同盟職員、「闇の工場員」、「賢い商品学者」(工場の中にあって商品不正を行なった者)そしてマフィアの一味により1990年に成金にのし上がった階級に比べて本当に些細な存在だった。「工場、新聞、蒸気船」(ソ連の詩人マヤコフスキーがソ連体制を批判的に謳った詩の中の表現)と国民の大部分、特に財産の少ない国民の生活条件と生活様式との現在の断絶はもっとはっきりしている。

ロススタトのデータによれば、現在のロシアでは2200万人の人が貧困以下の生活を余儀なくされている。しかし、このような人はロシアには最低でも2倍以上いると試算している専門家も複数いる。なぜなら、年金生活者だけで3800万人以上いるのであるから。ロシア科学アカデミー社会学研究所が実施した調査によると、56-65歳の年齢グループにおける貧困層の割合は、最近10年間で、2,5倍に増えた。国家が定期的に高齢者や公務員、軍人、母親、障害者に追加で与えているチップは大部分が、インフレや食糧品価格の高騰に食われてしまっている。

 

2006年2月に、当時の大統領ウラジミール・プーチンは、高所得者グループと今のところ極めて控えめに生活している我が国の市民との断絶の縮小を国家の最重要課題の1つと名付けた。それでも、Revadaセンターの調査によると、現在、プーチン政権時代にこの格差が縮まったと考えるロシア人はわずか13%しかおらず、80%は格差は増大したかあるいは同じ水準であると断言している。

 

今後はこの課題は新しい大統領に継承されていく。新大統領の最初のステップから判断すると、ドミトリー・メドヴェジェフは、中小の企業の力を借りてこの課題を解決する意向を持っているようだ。6月にベルリンで、彼は、「人々の生活の質や生活規準を改善することは、彼らをビジネスに引き込み、彼らに所有事業ができるようなチャンスを設定することによってのみ可能になる」と述べた。もし本当にこのような条件が設定され、企業家がやっと度の過ぎた法外な税金としつこい役人の(賄賂を期待する)「お世話」から解放されたら、ロシア人の50-70%が2020年までには自分を中流階級と思えるような生活を享受できることもあながち不可能ではなくなるかも知れない。

 

貧困からの脱出のもう1つの道は、労働力の賃金を上げることだ。なぜなら、ロシアには労働者に中には、やっとのことで生活をやりくりしている人が少なくない。それは当然なことだ。ロシア独立労働組合連盟(ロシア語表記ФНПР)会長ミハイル・シマコフの情報によれば、商品原価の中で給料が占める割合は現在わずか20-25%だ。科学アカデミー正会員エヴゲニー・ヤシンに至っては10-15%という数字を挙げている。いずれにせよ非常に低い。先進国、例えば、ドイツやフランスの場合は、58-75%に達している。

 

もっと低い例を挙げれば、例えば、AvtoVAZ自動車会社では給料の割合はわずか13,8%である。さらに、やはり比較のためにもっと例を出すと、自動車会社「General Motors」では65%に達している。

 

高齢者や子供、孤児、身障者を貧困から救うことができるのは国家だけであることははっきりしている。ましてや、国家には現在この資金はあるのだ。よく考えて欲しい。炭素資源の輸出からだけでもロシアは1日に10億ドル獲得しているのだから!

 

しかし我が国に襲い掛かるように押し寄せてくる石油マネーの豪雨はどうやら今の所は、貧困者には2-3滴の水滴しか届いてないようだ。豪雨をもっと分け合わなければならない。