下院選挙:プーチン承認の国民選挙に?
14:2021/11/2007

アレクサンドル・コノヴァロフ、戦略評価研究所所長、

ロシア・ノーボスチ通信社に寄稿。

 

 

12月2日に行なわれるロシアの議院(下院)選挙の一番重要な特徴は、ほんの数ヶ月前なら、恐らく、大部分のアナリストの意見は今回の選挙の展開の予測した場合如何なる政治的サプライズも起こらないだろうということで一致していると言えるだろう。しかし、選挙の日が近づくに連れて、状況は激しくなり予測がつかなくなってきた。プーチンが統一ロシア党の連邦リストの筆頭で立候補する決定をしたからだ。この決定はロシアの政党間関係の全体系を打ち砕くことになった。この「大統領の即興の決定」の犠牲になったのは、クレムリン政府がかつてないほど入念に作成した多党制という人的制度も壊すことになった。議会選挙と大統領選挙の両キャンペーンは異常なほど真剣に準備された。しかしキャンペーンを用意した政治学者の意見でも、選挙結果はあらゆる予測を上回ることになろうと語っている。大統領のレイティングは雲の向こうの高さにあり、政権党「統一ロシア」の党首としても誰も口を挟むものはいない。1人区が廃止され、申請の敷居も廃止され、7%障害が実質的に、下院では実質的に、野党なる党はなくなることが確実な情勢だ。

今回の下院選挙には基本的に1つの課題、下院がもっと完全に忠誠心を出し政府の提案にもっと耳を傾けるという課題が設定された。どうやら、まさにこの課題を最初に呼び掛けるように決定を下したのは、大統領政府により設立され支持されている3つの党、「統一ロシア」、「公平ロシア」そして「市民の力」である。しかし、選挙が近づくに連れてロシアの政治配置は完全に変わった。

投票用紙には11の政党が名を連ねている。しかし、彼らの間で同等の競争ができる政党は1つもない。議会に代表を送れる党は4党、いや、もしかしたら3政党しかないかもしれない。4政党とは、「統一ロシア」、ロシア共産党、自由民主党そして「公正ロシア」である。しかも、社会世論調査の結果によれば、確実に7%獲得枠を越えて得票できるのはわずか2政党、「統一ロシア」と「共産党」だけと予測されている。

プーチンを「統一ロシア」の名簿にトップで掲載する決定は、セルゲイ・ミロノフ党首の「公正ロシア」に最大級の打撃を与えた。実際、いくら現在の政治が柔軟性を持っているとは言え、ミロノフが、実質的にプーチンが党首を務めることになる「統一ロシア」を激しく批判し、プーチン大統領を褒め忠誠心を全うすることを同時に行なうことは非常に難しくなるだろう。まさにここに「公正ロシア」の党として今回の選挙戦略の重点が置かれた。プーチンが自分のリーダーシップで「統一ロシア」の存在に照明が当たった今、統一ロシアを批判することは無礼なだけでなく、政治生命を絶たれる危険を伴うことになる。従い、「公正ロシア」は、7%の障害という非常に控えめな成功を達成するためにすら、自分の行政能力(各官公庁のコネと根回し)を利用し、また何らかの方法で、最近まで下院に議席を送るチャンスを持っていた2つの政党、共産党か自民党、からどちらか1つが議席を放棄するよう働き掛ける必要が出てきた。

この場合最も可能性の高い犠牲者となるのは自民党のように思える。ましてや、ウラジミル・ジリノフスキーと彼の党には重大な問題な発生したことにもよるからだ。最大に重大なのは、自民党はもはや誰にも必要のない政党であるということだ。「統一ロシア」がいずれにしても憲法上の大多数を確保するだろうし、ウラジミル・ヴォリフォヴィッチ自身も自分の歴史的任務を終えた人物として政治の舞台から去ることができる。

その結果、下院には、どうやら、3つの政党、「統一ロシア」、「公正ロシア」そして「共産党」が議席を置くだろう。その際、「統一ロシア」は「公正ロシア」と共に、コントロールされた憲法上の多数の役割を果たすだろう。そうだ。完全に体制に順応された政党として共産党は政権の特別な問題は何も発生させないだろう。下院の第4の政党については、大統領の「統一ロシア」の名簿トップ登載決定後、その政党にとっては新しい構成で議席を送り出すことなど到底不可能だろう。「統一ロシア」は単なる勝利ではなく、決定的勝利が必要なのだという党大会でのプーチンの声明が出された以上は第4の政党にとっては下院議席での居場所などないだろう。換言すれば、この政党は、孤立無援で憲法上の得票数を勝ち取らねばならないのだ。しかし、選挙の結果がどのようであれ、下院はもはや立法権を持つ独立機関ではなく、クレムリン政府の支部のようになるだろう。

このようにして、行政的方法で上から比例選挙体制に移行させようと試みた時と同様に、多党制を植え付ける試みは現段階では非常に不思議にそして突然の結果を持って終焉となった。体制は基本的に1党制に移り、議会選挙は当初の意味を失い、申し分のない「国民的リーダー」であるプーチン大統領に法的全権委任を委ねるよう呼び掛ける、言ってみれば、古代ローマの国民選挙に変容していく。この委任兼を今回の選挙で大統領が取得することは殆ど疑いないことだ。不明なのは別のことで、大統領がこの全権委任を利用して何をするかということである。

ついでに言えば、大統領の行動は最近、「びっこのアヒル」、つまり去り行く者のよろよろ足の動きをまったくしていない。寧ろ反対で、プーチンは、新しい職務にこんなに積極的であったことがかつてないほど積極的に動いている。何かをやりたいという野心に満ちている。職務内容は厳しく論理的に処理している。最重要ポストには信頼できる人物だけを起用している。しかも、彼らには、規範となる対象の知識と経験よりもむしろ大きな金融資産をコントロール出来る能力を要求した。尤も、政府と平行して、経済的には巨額の予算を持ち非常に疑わしい経済効果を持つ国営企業体制が誕生することになった。しかし、すべてこれはポストからの退出や政権交代の準備ではなく、この政権を維持できる経済と政治の中に支配的高さを強化する準備をしているようだ。

かくて、クレムリン政府の計画は次のように見えると想定できるあらゆる根拠がある。基本的に、議会選挙の代わりに、プーチンに「国民の政治リーダー」の全権委任を与えることが目的の国民選挙が行なわれる。この交替については、皆がすでに完全に公然と論じている。大統領自身はこの交替について、法律上国家職務にある候補者は禁止されてはいるが、積極的に行なっている。すでに、公開会談で、大統領は、「統一ロシア」の支持だけで、自分が大統領ポストにいる間このようにロシアをこのように素晴らしい国にすることができた一度ならず強調している。すでに、「プーチンのために」と称する「社会運動」が上部からも明らかに承認されている。

議会選挙のメカニズムにより不確定の全権を持った「国民の政治リーダー」を作り上げることは2つの理由から危険である。まず第一に、ロシアは、政権交代を合法的にそして憲法上の手続きを介在することなく行なうことになる。第二に、提案されている路線は、平行した政権の2重構造を作り出すことが避けられなくなる。

すべてこれらはどのように組織的に形成されるのだろうか?何が?クレムリンでは2つの内閣が生まれるのだろうか?一方には、「ロシア連邦大統領」という表札が、もう一方には「ロシア連邦の国民的リーダー」という表札が?ばかげたことである。役人は、自分が明確に判るシステムの中で働く。だれに最も高い地位を与え、どの内閣に自分達の問題を解決を委ねるのか?すべてこれら、いや、その他の多くの問題の解決の際は明確ではっきりした回答を持っていなければならない。国の状態がそうでなくなった場合は、ある役人はこちらの内閣に、違う役人は異なる内閣に動き、またある役人は、さらにまた別の場所で、自分なりに慣れた階層関係の中で、政権とは全く関係ないグループを作る。2重構造の状況はロシアではいつも不安定と国内政治の先鋭化を招いていた。穏便な場合ですらその程度で済んでいた。悪い場合は内戦を招いていた。